ストロングおじさんのパワポでまとめるRTDの世界

RTDとはReady to Drink、栓を開けてすぐ飲める、缶や瓶入りのチューハイ・カクテル・ハイボール等の総称です

RTD市場 2018年実績と2019年見込のまとめ

はじめに

RTD主要各社の2018年決算と2019年見込みが出そろったことを受け、まとめを作成しました。以前、Twitterでもアップした内容の詳細版です。サントリー、キリン、アサヒ、サッポロは1-12月決算ですが、宝酒造のみ4-3月決算のため詳細な情報がなく、割愛しています(決算後、別途更新します)

尚、以前Twitterで報告した時点から、より精度の高い情報が出てきているので、数字はアップデートしています。また、いつものストロングおじさんと違い、語り口が固いのですが、書いてる時はそういうテンションだったので、ご容赦いただければ幸いです。

 

全体

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18年のRTD市場は前年比112%伸長し、35.1億本の売上であった。ケース換算でいうと、初めて2億箱を突破した。

09年から10年間で約2倍の販売量となり、特にストロング系が成長に貢献している(増分の7割がストロング系)

メーカー別に見ると、18年はサッポロとキリンの好調が目立った。サッポロは元々のシェアが低いことを考慮しても、驚きの数字であり、またキリンも市場を上回る成長を達成し、首位のサントリーにじわじわと迫っている。

詳細については、各社個別のスライドにて、後述していきたい。

 

サントリー

2018年実績

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18年は市場をやや下回る伸び。とはいえ、乖離はわずかであり、追われるトップランナーという立場を考慮すれば、十分すぎる数字だろう。

ブランド別では、ハイボールの伸びが前年比119%と成長を牽引。やはり、このカテゴリーの絶対的なブランド力は強い。

ストロングゼロは108%と伸びてはいるが、ストロング全体の伸び114%からするとやや低成長か。18年はキリン・ザ・ストロング、99.99とストロング系の大型新製品が登場したため、その影響を受けた感じだろう。とはいえ、それでもキッチリ伸びるのは、やはり強さか。18年も多数のフレーバーを展開、中でもドライ・ザ・シャープやトリプルレモンといった革新的なフレーバーを新発売し、ファンを楽しませてくれた。ほろよい含め、主力3ブランドは堅調と言える。

一方、それ以外はやや低調な傾向なのが気になる。力を入れているプレミアムRTD、これはこくしぼりプレミアムやカクテルバー・プロフェッショナルが含まれていると思うが、0.1億本と思ったより数字が伸びていない。価格が高いのと、高級感のあるテイストの追求が、結果的に甘口のテイストにつながってしまっているのが、影響している気がしている。今後も注力していくのだろうか?

また、パワポには書いていないが、明日のサワーシリーズは0.3億本と案外な数字。短期の間に、ラインナップをすごい拡充し勢いがあるため、もっと売れると思っていたが。。。やはり、レギュラー度数の非高果汁という領域は、氷結のブランド力が強すぎて、シェアを伸ばせないのだろう。

2019年見込

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19年はほぼ市場通りの成長を見込んでいる。

ストロングゼロは市場を大きく上回る前年比115%。やや過大な数字な気もするが、4月に新規投入する瞬感レモンシリーズも含んでいるのであれば、達成の可能性があるだろう。

3月5日に投入されたこだわり酒場のレモンサワーは0.4億本とやや控えめの数字。とはいえ、この辺は売れ行きをみながら、修整するのだろう。オリジナル製品のこだわり酒場のレモンサワーの素も、結果的に2018年は計画対比13倍も売れた(笑)。早速飲んでみたが、オリジナルに割と忠実で、なかなかのデキだった。同じように、計画対比のジャンプアップが期待される。

 

キリン

2018年実績

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キリンのRTDにとって、18年は大きく躍進した年になった。個々の製品の成功もあるがが、何といっても全体の戦略の見事さが目立った。

象徴的なのは、ザ・ストロングの発売だ。氷結ストロングという、ストロング系シェア2位の製品がありながら、何故このタイミングで?というところだ。しかし、実情としては、近年ストロングゼロとは差がつく一方で、氷結ストロングどころか氷結ブランド全体としても、ストロングゼロに迫られている。そこで、ストロングゼロに対抗し得る、ハード系ストロングをこのタイミングでリリースをした。

そして、ザ・ストロングは18年のRTDの新ブランドで一番のヒットとなった。結果として、リソースが分散したこともあり、氷結はストロングゼロにブランド別シェア首位の座を譲ったが、会社としてはサントリーよりも伸びた。カニバリを恐れないこの英断を、私は評価したい。

蛇足だが、18年のキリンは、本麒麟のヒットやPB製品の取り込みにより、ビール類が非常に好調でよくニュースに取り上げられている。個人的には、RTDの好調とこの見事な戦略のほうにも、もう少し光を当ててほしい。

また、氷結に次ぐ主力の本搾りについても、2桁成長の大きな伸び。果実とお酒のみという、唯一無二の味わいは、今後ますます評価されていくだろう。

2019年見込

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19年はやや控えめの成長率となっている。とはいっても、19年は新ブランドに頼らず、既存ブランドに集中していく方針なので、それでこの数字が取れれば、御の字だろう。氷結、ザ・ストロング、本搾りの強みのある3ブランドに注力する方針は、とてもわかりやすくかつ合理的だ。

氷結はRED・GREENといった新コンセプト製品の発売、及びストロングのリニューアルで、話題を喚起している。18年は前年並みに留まったが、19年は前年比108%と盛り返すプランのようだ。

ザ・ストロングは19年は通年販売(昨年は4月~)になるため、133%の伸びは可能だろう。ホワイトサワー、ゴールドサワーといった独自のフレーバーが人気だが、個人的には果汁をちゃんといれた果実系を拡充して欲しい。レモンこそ果汁入りだが、その後にお出たシークヮーサー、ピーチは無果汁(エキスは入っているが)。グレープフルーツやライムといった、王道の果汁系の展開を切望する。

本搾りは、引き続き安定した伸びを見込む。最近、メディア展開に注力しているように見受けられ、もっと認知度が上がっていけば、自ずと売上もさらに伸びていくだろう。

 

アサヒ

2018年実績

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全体としては109.4%とやや市場を下回ってるが、ほぼ堅調といってよい数字だろう。

18年のアサヒRTDのトピックは、何といっても贅沢搾りのヒットに尽きる。キリン・本搾り、サントリー・こくしぼりといった先行する高果汁系に対抗し、3月にリリースされた。糖類や香料も添加しているため、本搾りに比し飲みやすいという差別化要素からか、市場で受け入れられ、0.7億本を売り上げた。これは、ここ数年のRTD新ブランドでは、ストロング系を除けば一番のヒットであり、完全にもぎたてに次ぐ柱となった。

その一方、既存製品については、課題が残る結果になった。もぎたてについては、前年比84%と、下方成長となった。ザ・ストロングと99.99のヒットに割を食ったのだと思われる。

また、ウイルキンソンハードも、フレーバーを拡充し、攻勢をしかけたが、売上は伸び悩んだ。RTD界のボリュームゾーンであるストロングでの苦戦は、贅沢搾りの好調で目立ってはいないが、当然テコ入れが必要だろう。

その他の製品には、クリアクーラー、カクテルパートナー、ハイリキ、カルピスサワー、Slat、端麗辛口ハイボール等が含まれる。キリンに比べラインナップが多すぎるため、もう少し選択と集中を進めることも必要かもしれない。しかし、一方で、その中から18年に新発売されたBOLS RTDのような素晴らしい製品も出てきているので、戦略の判断が難しいところだが。

2019年見込

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19年は前年比112.6%と、結構強気の計画を組んでいるが、18年の状況からするとややチャレンジングではないかと感じている。

もぎたては108%の計画。4月に中身・パッケージを一新したリニューアル品を投入する。ストロング系の競合は激化しているが、もぎたてのフレッシュキープ製法による強い香味を、もう一度市場に訴求できれば、十分狙えるところだろう。

ウイルキンソンは、推計だが少なくとも2倍以上の数字を見込み、かなり高いハードルと思う。3月5日にハードナインへのリニューアルを実施。CM放映や交通広告への展開も積極的に行っており、アサヒの本気を感じる。こだわりのジンとフルーツスピリッツの組み合わせを捨て、ウオッカも使用するという、一般ウケする製品を狙ってきたようにもとれるが、これが正しい戦略であるのか、動向を見守りたい。個人的には、早速飲んでみたところ、素直に美味しいと思った

贅沢搾りはやや控えめな数字。昨年は実質9か月の発売で、通年販売となる今季はもっと上も狙えると思うが、まずは様子見だろうか。積極的に新フレーバーを展開し、本搾りと並び高果汁市場を盛り上げていって欲しい。

色々述べたが、何といってもカギはもぎたての復活だろう。リニューアルに先立ち、3/20(水)~3/24(木)に六本木ヒルズで「もぎたて鮮度実感BAR」が限定オープンするらしい。発売に先行して、リニューアル品を味わえるので、初日から駆け付け、確かめてこようと思う。個人的に思い入れが強い製品のため、期待する。

 

サッポロ

2018年実績

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サッポロビールにとっては、18年は歴史的な飛躍の年になった。

その原動力は何といっても99.99(フォーナイン)の発売だ。99.99%の高純度ウオッカを用い、今までにないクリアな飲み口のストロング系チューハイを実現。結果、18年に発売されたRTD新ブランドの中で、最高の初動売上を記録する等大ヒットとなり、実質4か月の売上ながら、0.4億本を売り上げた。特に、SNS界隈での人気が高く、今やストロングゼロに代わる新たなストロング系のシンボルになりつつある。

一方で、99.99以外は必ずしも順調だったとは言えない。まず、99.99以前の主力であった男梅サワーはマイナス成長。新発売のりらくすも、出だしは好調だったが、結果的には計画を下回る結果になった。99.99の躍進はあったとはいえ、それでも業界の中でのサッポロのシェアは約3.5%に過ぎず、まだまだ上位4社とは差がある。真のRTDトップメーカーに食い込むんでいくためには、99.99以外の強化が課題だろう。

2019年見込

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19年も引き続き、大きな成長を狙う。1.7億本の目標はケース換算で1,000万箱となり、中期計画上の数値を一年前倒しにする覚悟だ。そして、その中でも核となるブランドは、99.99と19年に新規投入するレモン・ザ・リッチとなる。

99.99は前年比167%の0.7億本を狙う。昨年は実質4か月の販売のため、個人的には通年となる今回はもう少し高い数字を狙えるのではないかと思う。19年はここまで、新たに発売されたシークヮーサー、ライムとも非常にデキが良く、また18年はドライのみだったCMも、4フレーバーで実施する等、プロモーションも強化している。そのため、もっとイケると思うのだが、追いかけるものはいずれ追われるということだろうか。ストロング系全体の競争激化を恐れたのかもしれない。

レモン・ザ・リッチは4月2日に投入を予定する。ニッチな製品が多かったサッポロだが、レギュラー度数のレモンサワーという、缶チューハイの王道製品をぶち込んできた。レモンにこだわったリッチな果実感を売りに勝負するが、レギュラー度数という点では氷結、リッチな果実感という点では本搾り等、キリン勢を中心に大きな壁が立ちはだかると想定される。そのため、数値目標は0.2億本と控えめだが、99.99に引き続き大ヒットし、再び革命を起こして欲しい。弱者が強者を倒すというストーリーは、いつだって痛快である。

また、2月に投入されたサッポロマグナム等、サッポロらしい個性的な製品にももちろん期待する。個人的には、昨年末に限定発売されたCotoCotoの新フレーバーを出してほしい。

 

 

以上、ご拝読いただき、感謝します。